もうそろそろOLCの第35回定期演奏会!

私が敬愛してやまない鈴木秀美先生主宰のオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)の定期演奏会がこの土曜日に上野学園石橋メモリアルホールで開催されます。東京近辺でお時間がある方が羨ましい…。私も日本に逆留学していた際は、OLCのコンサートがとても楽しみでした。その当時は浜離宮朝日ホールでの開催でしたね。もう10年以上も前の事です。

OLC、そしてデビューがまだ記憶に新しいコーロ・リベロ・クラシコ(CLC)。11月に一緒にGBEでバッハを演る仲間達が数名、今週末のOLC/CLCコンサートに参加しております。そういう仲間とバッハが出来るなんてなんて幸せなのでしょう…!

鈴木秀美先生については数年前に私個人のブログに書いたことがあります(英語のみ)。それでも書き切れないほどのインスピレーションを会う度に頂くので、先生の芸術を広め残す何らかのお手伝いが出来たらと思いますが…米東海岸から一体何が出来るのでしょう!

大槻

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古楽的演奏のルール?

米国ヴァーモント州の緑の丘の上、マルボロ・カレッジのキャンパスで開催されるマルボロ音楽祭。そこでバッハグループのコーチングを始めてから、ハイレベルのモダンの奏者の皆さんを相手にしたレクチャーやマスタークラスをする機会が増えました。昨年の国際セジョン音楽祭(米国フィラデルフィア)や東京ヴィオラスペースでのバッハ特別講座がその例です。今年(2015年)の11月のGBEコンサートに参加してくださる音楽家の皆さんのほうがよほど実践的な古楽演奏の知識をお持ちで、私のような者がバッハ演奏のお手伝いをするのは甚だ恐縮なのですが、バッハに興味津々のモダン奏者の皆さんを励ましつつ一緒に音楽を作っていくのは、とても楽しくやり甲斐のある仕事です。

短い時間しか与えられないレクチャーやマスタークラスにおいて、バッハを中心としたハイ・バロックの音楽の奏法を語る時、それはどうしてもルールの様に語ってしまいがちになります。私も実際、古楽ではヴィブラートは装飾にしか使わないんだよ、とか、ドミナントの和声はトニックの和声より大きく有るべきなんだよ、等という説明をよく耳にします。でも我々は、実際にはそうしなければいけないからするのではなく、音楽的にそうしたいからする、というのが正しいところです。

美学、というと大袈裟になってしまいますが、何を良いと思うかは、知識やセンティメントに左右されます。対して美味しくない物でも、素晴らしい景色を見ながら食べると美味しく感じますし、幼少の折に食べた駄菓子の味を好もしく覚えていらっしゃる方も少なくないでしょう。かあちゃんの味が一番、というのもそうですね。Pixarの映画『レミーのおいしいレストラン』[原題:Ratatouille]でも、高級フランス料理店には登場することのない、本来は農民料理であるラタトゥイユをレストランで出して、ある登場人物を感傷的にさせていました。知識や経験、そして感情は、我々の主観をとても大きく左右してしまうのです。

古楽を学び始めると、避けて通れないのが、当時の理論書や教則本、そして演奏習慣についての新しい文献の読書です。また古楽器演奏の録音も多く聴く事になるでしょう。経験豊富な古楽器奏者の著書もとても参考になります。その知識を得るプロセスは、丁度、以前まで親しめなかった味覚を良いと感じるようになる、いわば『大人の味』(英語で言うところのacquired taste)を得るプロセスと似ています。良さが分からなかったのが、分かってくる。そして、自分からその味を所望するようになる。すると、調味料が付きすぎるのを極力避けたり、素材の味そのものを大事にしたりするようになってくるわけです。

ヴィブラートはケチャップの様。飽きる味や脂っこい物には効果的でしょうが、素材の味がよければあまりつけたくありませんよね。つけてはいけないからつけないのではなく、つけない方が美味しいからつけないわけです。またその逆に、つけた方が良いと判断すればもちろんつける!ルールは本当はルールなのではなく、自分が後に得た知識や経験から来る、演奏のその場その場の選択の方向性なのです。

大槻